目黒区職員に必要なのは想像力!!

2023年2月19日の東京新聞一面に先日の請願に関係する記事が掲載されました。

重度障がいある男性の熱意 「働きたい」行政動かす
目黒区 支援制度 新年度から導入へ 

Web記事はこちら
https://www.tokyo-np.co.jp/article/231963?s=09

ICTの発達や働き方の多様化が広がり、重度障害のある方々も自らの能力や経験を生かして就学や就労が実現できる時代になりました。それにも関わらず、重度訪問介護の利用者の方は、就労や就学のために、通勤、通学をすると今まで利用できていた訪問介護サービスが利用できなくなってしまうという制度上の問題があります。

この制度の不具合を解消する一助として、重い障がいがあっても働けるよう、就労中に必要な介助費用を補助する国の事業が3年前に開始されました。しかし、事業を実施するか、しないかの判断は各自治体に任されています。

そして、この記事にもあるように、現状の自治体の反応は鈍いというが事実です。

2022年末時点で東京23区で「重度障害者等就労支援特別事業」を実施しているのは4区。また、「重度訪問介護利用者の大学修学支援事業」を実施しているのは6区。

何でも横並びが良いと思っている行政職員のマインド

認定NPO法人DPI 日本会議が2021年に実施した「重度障害者の通勤・職場等における市町村の新支援施策 実施状況調査の報告調査」によれば、未実施の市町村の実施しない理由(抜粋)として多くあげているのが、

  1. 近隣の市町村でまだ実施していない。情報を集めているところ
  2. 県内で実施しているところはない
  3. まだ検討していない。近隣でもやっているところの情報を知らない
  4. ニーズや個別の事案など折衝していくので、まだ実施の見込みは立っていない など

他が実施していなければ実施しないのか!? という素朴な疑問が湧いてくることでしょう。しかし、そのマインドこそが、行政機関内部にはまん延している空気なのです。(特に目黒区)

行政機関が、事業を実施しない理由として「近隣の市町村でまだ実施していない」という回答が多いのは、「周りを見ながら行動しとけば安全」という思考停止を生み出す原因にもなっています。

例えそれがたった一人の区民のニーズであっても、真にその制度を必要とする住民がいれば、解決方法を探ること、アクションを起こす事は当然のことだと考えます。

なぜ、積極的に区民ニーズを捉えようとしないのか

そして、同時に今回の目黒区の事例から判ったのは、「行政は詳細な区民ニーズを把握することにさほど長けてはいない」ということ。記事にあるように、区市町村が実施主体となる任意事業だが、ほとんどの自治体はニーズを把握しておらず、これは目黒区も同様でした。

この行政職員のいうニーズの把握とはいかにして行われているのでしょうか?

これらに関して、目黒区の事例を所管委員会での請願審査時の議事録をもとに検証してみたいと思います。

目黒区でもご多分に漏れず、これまで実施してこなかった理由を、①任意事業であること。②区民の方からのご要望を頂いてなかったから。と、答弁しています。

そして、2022年8月に事業の対象者となる区民から事業の相談を要望を頂いたため、事業実施の検討を開始した。と答弁しています。

この要望とは、当事者の区民の方がこれまでのメールや事業者を介して何度も確認や、やりとりをしてきたが、このままでは全く状況が改善されない事を悟り、文書によって役所の所管に直接「要望書」を提出したことを指しています。

本来であれば、当事者がここまで制度の実施を訴えるまでもなく、国が就労中に必要な介助費用を補助する事業を開始した令和2年10月にニーズ把握のための積極的なアプローチを区が取ることもできたはずです。

答弁によれば、事業の対象者になり得る区民の方は30名前後。

また、制度を実施した場合の費用負担も国50%・都25%・区25% 

国や都との事前調整が発生する事業実施に向けて準備期間を考慮すれば、実施主体の目黒区はできるだけ早くニーズを把握して準備に努めたいと思うのが普通なのではないでしょうか?

それであれば、もっと積極的な情報収集を行うはずですか・・・

目黒区は区民ニーズをどのように把握しているのかを以下のように答弁しています。

  1. 計画相談支援事業所(外部の委託事業者のこと)が一定期間ごとにサービス等利用計画案を作成し、利用者ニーズの把握を行っている。
  2. 目黒区は計画相談支援事業所と連携を取っているので、利用者からの希望やニーズを把握できるようになっている。そうです。

例え目黒区が考える「区民ニーズ把握プロセス」が機能していたとしても、行政職員が明確な就労の意思を確認できていなければ、区民ニーズの把握にはつながらないということです。

当事者区民と行政職員との温度差

所管課課長も、区議会の多数派も請願によって実施したのではない。と強調したいようですが、結果的に1度や2度の区民の訴えで役所が動かなかったこともまた事実なのです。

その間、就職活動も本格的に始められず、在宅での仕事の依頼も断ることになったのですから、区民の就業機会の損失を生じさせた行政の責任は大きいと思います。

時系列まとめ。

2018年3月当時も定期的に当事者ご本人と福祉相談支援員さんとの間では、将来の目標についても直接意思確認が行われ、本人の希望が伝わっていたことが記録から読み取れました。(目黒区は当然これらを確認しているはず)

当事者の区民の方は、ロースクールを終了し、司法試験の合格を目指し日夜勉学に励んでいました。そして、司法試験に合格したら法曹界で活躍をする。という明確な目標が記載されたサービス等利用計画案から確認できます。(しかし、残念ながら目黒区では、就労の希望やニーズが有るとまでは、読み取ることができなかったようです。)

司法試験が終わる5月頃から具体的な就労に向けご本人も様々情報を収集していました。

そして2022年には支援員の方を通じて目黒区の担当ケースワーカーにも何度も問い合わせをしていた記録が残っています。

2022年6月の問い合わせを受けた目黒区職員は、「来年度から就労を開始するという状況は重々承知しているが、進行の如何含めて年単位での時間がかかる。他区の実施状況や情報は収集しているが、希望に添えない。」という対応をしています。そして、このように区民から要望があった事は上司に報告する。ということでした。

これだけのデジタル記録が残っているにも関わらず、

目黒区では、国が事業を開始して以降の区民からの相談、要望は8月まではなかった。と断言していることを考えると

  1. 窓口担当をした職員が上司に報告をするのを怠った。
  2. 報告を受けた上司が具体的な指示を出さなかった。
  3. 情報収集するだけで本当に年単位の時間が必要な組織である。でもない限り相談も要望もなかったなど言い切れるはずがありません。

課長の答弁含め時系列で整理して検証しても、目黒区の対応には釈然としませんが、いづれにしても、これだけ長い間支援を必要とする区民を待たせ、その間のフォローも十分ではなかった事は事実であり、このような対応を行政が続けていれば、区民と行政の信頼関係は構築できないと思います。そのことで区民に不必要な不安を抱かせ、議会にも請願をするなどより直接的なアクションを取らざるを得なかったということです。

日本語特有のあいまいさもあるでしょうが、今後はこういったミスコミュニケーションを発生させないために、☑チェックボックスを用いて『就学の意向 あり なし』 『就労の意向 あり なし』 と単純化することで、ニーズ把握に漏れを生じさせないという方法も考えられます。

役所という図体の大きな組織が繊細な業務をすること

私が目黒区議会議員という立場で4年間、目黒区行政という機関を観察し続けて見えてきたのは

  1. 行政は大小様々、あまりにも多岐にそして複雑化した多くの事業を行っており、組織としての図体も大きく、承認プロセスに時間がかかり、小回りが利かなくなっている点。
  2. 委託事業の多さ。必要な予算を確保するのは行政だが、実際に現場で区民と向き合うのは外部に委託している事業者が担っている事業が多い。関係している人員が多い分、ミスアンダスタンディングやミスコミュニケーションが生じてしまう点。
  3. 職員が毎年のように異動するので引継ぎを完璧に行うことはほぼ不可能な点。
  4. そして、毎年のように、国や都から法の改正や新規事業など様々な事業が降ってくる点。

大きな組織であればどこも同じような課題は抱えていると思われる職場の課題が役所の中でも起きています。これらに日々対応している基礎自治体の職員が日常業務に忙殺されているのは想像に難くありません。

それでもやはり区民という生身の人間を相手にする職業ですから、どんなに忙しくても、思いやりと想像力を働かせて欲しいと願って止みません。

行政の仕事は、日々の業務の一つ一つを決して疎かにしてはならない業務の積み重ねで成り立っています。一つの判断やミスが時に区民の人生そのものを左右してしまうこともあります。

議員として

具体的な事業に関しては、あえて組織外の人間だからこそ気づける問題を指摘し、改善がされたならば、次は実施に向けて具体的な改善提案を続けていくことで事業の計画は精緻化していくでしょう。

しかし、誰が悪い訳でもない。強いていうなれば、組織の持つ空気感とでも言うべきなのか。温度感、雰囲気という漠然としながら、なぜか組織を支配している目に見えない組織のカルチャーに関してはいかんせん議員という組織外の立場からどうすることもできないというジレンマ。この部分に関しては私の最大の悩みのタネでもあります。

一事が万事。目黒区役所という組織は・・・
この組織が本気で変わる為には、黒船来航レベルのインパクトが起こらない限り無理なのか?

せめて、頑張る職員を腐らせないキムコ的な第三者は必要。それが区民の皆様かと♡

関連ブログ

区長に予算要望編
目黒区に住んでいるからという理由で就学や就職をあきらめて欲しくない!!
https://aishirakawa.tokyo/blog/5543

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