2020年10月にも今後の認可保育園での定員割れが起こる可能性について、どう対処していくべきか。現状と課題、そしてコロナ禍での経営負担増の軽減と保育士不足を解決するための職員配置基準の弾力化(保育士配置基準の定員見合いから在籍児童見合いへの変更)を本区目黒区に対しましてもこれまで要望しておりました。
内容は過去ブログをぜひご参照下さい。
https://aishirakawa.tokyo/blog/5170
2020年当時要望書をまとめるため各区に対してアンケート方法により事前調査を実施致しました。下記はそれらを改めてまとめた「23区の認可保育園の職員配置における各区の基準や考え方」の一覧となります。
表をご覧頂きお判り頂けるように、23区でもその基準はまちまち。認可定員と利用定員が異なる場合の職員配置に関しては「利用定員を基準にしている区が7区」に対し「認可定員を基準にしている区が4区」という調査結果となりました。また、このブログではボリュームがあるため今回はご紹介ができませんが、その他「どのような場合に利用定員を定めているかの理由もアンケート調査の対象内容としました。
また、認可定員と利用定員が異なる場合の保育士配置加算の基準についても利用定員を基準にしている区が9区、認可定員を基準にしている区が2区という調査結果でした。
なぜ、このような調査が必要なのか?
私がこのような調査を行った背景には保育士の配置が、「設定された定員」に見合う配置を義務付けられているのにも関わらず、運営に係る補助金は「実際に入所している児童数」に基づき算定されている事で、定員通り入所していない場合の人件費差額が事業者負担になりこれが経営を圧迫する要因になり得ると考えたからでした。
下記は2022年7月28日の記事です。 東京23区の認可保育所 0歳児は半数超が定員割れ NHK調査
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220728/k10013739131000.html
NHKの調査によれば、0歳児を受け入れている2526施設のうち、定員を満たさないところは1351施設、率にして53%。
1歳児では、3055施設のうち31%、2歳児では、3057施設のうち40%が、それぞれ定員を満たしていない事がわかったとのことです。
この変化に対して、専門家の意見の中でも「余裕をもった保育ができるという利点があるが、経営が立ちゆかなくなる側面もある。今後、さらに少子化が進むなか、施設の定員基準など、制度の見直しを検討する時期にきているのではないか」と話しています。
下記の表は直近の東京都の公表している
23区の 保育所等利用待機児童等の状況です。
数日前にも報道によれば都内を中心に184ヵ所の保育施設を運営(目黒区内でも認可保育園の運営をしている)保育大手グローバルキッズが都内で運営する園の約1割にあたる16ヵ所の保育園で保育士を水増しして運営費を不正受給していた問題が大きく取り上げられていました。
同社の在籍園児数は合計で9360人と多いこと、不正とは別の理由で2022年9月期の純利益は当初予想の8億円から赤字転落のマイナス3億8000万円となる見込みとなった。ことなども同社から発表されました。
そして本日もまた、グローバルキッズが江東区内で運営する保育園が9月末をもって突然閉園することを決めたと江東区の区議から情報提供がありました。
その理由も「赤字が数千万に及んでおり、事業がなりたたない。コロナの影響もあり利用が減り、人員体制の確保もままならない。管理者も9月末をもって退職。職員も定着しない。」などを理由に事業継続が困難との判断をしたとのことでした。
保育需要の動向を踏まえた施策の早急な展開の必要性
不正防止として行政が行う「一般指導検査」「実地検査」の積極的な実施と共に「委託費の弾力運用」の問題も再考する必要があるでしょう。
民間企業の保育業界への参入に伴い、 委託費の弾力運用(人件費、事業費、管理費の相互流用、各保育園で使うはずの収入を同一法人が運営する他の保育園や介護施設、関連事業、本部経費などの経費にも充てることができるようになった。)ことで、保育士の賃金面での処遇改善をむしろ後退させているのではないか?と考えられるいくつかのケースも表面化しています。
運営事業者の不正は決してあってはならないことですが、基礎自治体として今後もこのような経営悪化による保育園の急な閉園が都内で相次ぐことが無いように今後各区は待機児童ゼロ達成後の新たな課題として保育需要の動向を踏まえた施策を早急に展開していく必要性を強く感じます。
全国的に保育士不足が課題
2022年も再度、保育士が、在園児数ではなく設定した利用定員に対して必要な数を配置することが義務付けられていることへの対応の必要性を訴え。これを続けていけば、定員に対する空きが大きくなるにつれて、運営事業者の収支が悪化していく可能性があること。また、この問題に早急に対応しなければやがて、適正な職員配置等に支障を来たす恐れがあることを危惧します。事業者の費用負担についても本来保育の質の維持や向上に充てるべき資金の一部を保育士の採用活動経費に充てざるを得ない等、保育の質の担保の観点からも対策が必要となっていると考えられます。
これら問題を他区の方々とも広く共有したいと考え本日ブログにまとめました。