令和元年度の目黒区一般会計歳入歳出決算の認定に反対しました。

私は、決算審議で「行政機関の日常作業」が、ときに「ひとつの家族の幸せを奪い取る」という、職員が忘れてはならない重要な内容について質問を重ねさせていただきました。

行政機関には多くの個人情報があります。その情報を意図的でなくとも「公表すべきでない相手に勝手に公表してしまう」ことが、状況次第では「命が失われることにすら繋がる」ことを、ひとりひとりの職員が自覚していただきたい」という想いで、質疑を繰り返させていただきました。

再発防止の特効薬

ひとりの職員にとって目の前の仕事は、年間、数千件の業務のうちの一件です。たった一回の一件を軽んじたとき、私が幾度もご指摘申し上げたような「ひとつの家族に苦難を与える」ことが簡単に起きてしまうのです。

行政機関は容易に「家族の幸せを奪い、不幸に陥れる」ことができてしまうのです。たった一つのミスで懸命に生活している人たちの幸せを、その幸せを積み上げるために費やした多くの時間と労力を「奪い取る」と自覚して頂きたいのです。

自分の身に降りかかった時を考えてください。皆様方が幸せに生活しているその生活環境を、住んでいる地域でもない行政機関が「あなたに害意のある人に情報を公表した」ことで、今あなたが住んでいる家から引っ越さねばならなくなることを想像してください。

「自分の子供の身の安全のために転校をさせなければならない、新しい住居を探さなければならない、しかしその間も仕事はしなければ生活ができない」ほんの数秒で構いません。想像してください。

事者意識を持って、自分に降りかかったときにどれだけのことを考えるかを想像してください。それが事故の再発を防ぐための特効薬です。

個人情報を握るのは、他人の人生を握ること

この大失態を知った青木区長は被害者に明確に謝罪もしなかった。担当した所管はシステムが悪いから仕方ない。業務的には整備されていなかっただけ。私は悪くないとでもいうかのように言い募る。

もし職員の皆様、議員の皆様が被害者だったとして、自分の身に同じ事が降りかかっても、この対応が「正しい」と思いますか。

かつて飲酒運転が横行していた時、その「たった一回の飲酒」で起こした事故が、一瞬で他人の幸せを奪うことの恐ろしさが問題となりました。そして飲酒運転は厳罰化されました。

それと同じくらい個人情報を取り扱う「職員の皆様の日常業務」は「注意しなければならない」ものなのです。

個人情報を握るのは、他人の人生を握ることです。
人生を勝手にねじ曲げ、幸を奪い取ることが簡単にできます。一度失われた幸せを取り戻すことにどれだけの苦労があるのかを想像して欲しいのです。

起きた事実は変わらない、いつ公表しても変わらない。
事実を隠すことを隠蔽という

私は単純に、青木区長が「責任を感じている」ことに期待しました。情報漏洩事故の恐ろしさを自覚していると期待しました。だから一般質問もしました。

しかし全く自覚がないことを、改めて決算審議で確認させていただきました。

青木英二目黒区長にとっては「情報漏洩事故が発生した」という事実は「未成熟情報」だそうです。

事故が起きたことは成熟情報です。目黒区も被害者も認めている公知の事実です。そこには議論の余地がありません。発生した事実は未来永劫変わりません。それは確定しています。確定しているのだから、成熟情報です。

だから目黒区でも通常、事故を起こしたときには必ず事故報告をします。議会に正式に報告します。

今回の決算審議でも教育員会部局に議会報告をした事故件数をお訪ねしました。その際、それら事故情報は成熟情報でしたか?それとも未成熟情報でしたか?

という問いに対して

「図書館の天井が落下したという事実の報告をしたということ。であります。」との明快なご答弁を頂きました。

正にこれが行政機関が事故の発生の事実を把握した際に取るべき正しい行動だったのです。

過去の事例でもそのそれぞれに対して、常に目黒区行政は「事故が起きた」と議会へ報告します。その後の経過報告で「こういう方法で再度の発生を防ぐ」「このように賠償する」「現在被害者と話し合っている」「話し合った結果このようになった」というように後日の報告が行われるのです。

今回の情報漏洩事故を私が「情報隠蔽」と指摘するのは、最初に行うべき「発生報告を1年にわたって怠った」からです。起きた事実は変わらない、いつ公表しても変わらないのに隠すのは、隠蔽です。

これが大問題なのです。だからこそ報道機関が「目黒区の情報漏洩事故」を報道するのです。

隠蔽の疑いすらある「隠されていた」「重大なもの」だから報道が大きくなるのです。

目黒区は被害者にいろいろな対応をしていました。途中から全く何もしなくなったとはいえ、一時的には対応をしていました。つまり「事故があった」ことの責任を目黒区の担当所管は認識していたのです。成熟情報だから、対応しようとしていたのです。

係争中や捜査中の事案のように「加害者と被害者の意見が一致しない」「加害者は事故を認めず、被害者は事故だと主張する」のであれば「発生した」ことが未成熟情報になります。しかし今回はそれには当たりません。

区長はこんな基本的なことすらも理解していません。

危機意識の低い区長

成熟情報である「発生報告」を議会に行わず、さらに経過として、事故発生から一年が経って対応が終わらない。

これが10年だったらどうなるのでしょう。区長が変わったらどうなるのでしょう。いったい誰が責任を取るのでしょうか。行政機関はいつか必ず責任を取らねばならないのです。

こういった目黒区行政の姿勢は、すべて、青木区長の危機意識の薄さから生じていると、私はこの決算特別委員会で明確に確認させていただきました。

情報漏洩事故発生当時、区長は数ヶ月後に自分自身の区長選挙を控えていました。自分以外が区長になる可能性もある状況で、その「事故が発生したことを意図的に報告しなかった」ことには、一切正当性がありません。

区長としての前に、一人の仕事をする人間として、仕事に対して不誠実です。もし青木区長が当選していなかったら、その後に「情報漏洩事故を報告しなかった責任」を誰に押し付けるつもりだったのでしょうか。
担当所管でしょうか。それとも後任の区長でしょうか。いったい誰に申し送りをするのでしょうか。それともまさか、なかったことにするつもりだったのでしょうか。

そういうことを一つも考えていないのなら「当事者意識が全くない」と判断するほかありません。

青木区長、あなたが区長として運営している目黒区という行政組織。その職員が「誰かの財産について、誰かの人生について、多大な損害を与えた」のです。

起きた事実は、隠したところで必ず公表しなければならない。「発生した事実」を「議会に正式報告しない」で握り潰しました。その罪深さを全く自覚しておられない。責任感が一切感じられません。

反対の理由

今回の決算審議の中で判明しましたが、この事故を聞いていた議会の方々が4名がいたそうです。その方々が「議会に正式報告すべきだ」と区長に進言していないことで、議会全体が情報隠蔽に加担したことになってしまいました。私は議会の一員としてとても悲しく思います。

たった一度の情報隠蔽、報告不備があっただけで、それ以外の「正しく運用されている数万件に及ぶ日常業務」への信頼が揺らぐことが、なぜわからないのでしょうか。

私はこういった「目黒区の行政運営の姿勢そのものが不誠実である」ということから、「同じように事故報告されていない事故や、議会に隠して支出している事案がある可能性」を考えざるを得ません。ですから、この決算を認定することはできません。

情報を隠蔽したとすら自覚していない、恥ずかしいと思わない青木区長。

区長が意図したか意図しないかにかかわらず「隠している事案」が他にもあるのではないかと疑わざるを得ません。そしてそれを調査するのは、数日では不可能です。

これは本来なら与党会派が百条委員会を開いて、この目黒区の信用を取り戻すために議会が追及すべき事案だと考えます。

私は「昨年の予算執行は正しく運用されている」と、区議会議員の一人として「認定する」ことができません。なぜなら「令和元年に行政は正しくない行政運営をしていた」という事実を、区長が隠していたことが明確になっているからです。

今後、目黒区職員の皆様のひとりひとりが「日常業務を疎かにすることの危険性を自覚していただくこと、個々人としての職員の皆様方が、自己の良心に従って正しい行政運用をしていただくことに強く期待します。
目黒区の信用を回復するのは、職員の皆様ひとりひとりの真摯な対応と行動にかかっています。

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