都市環境委員会行政視察報告書(香川県高松市)

都市環境委員会行政視察報告書
提出先 目黒区議会議長
提出者 白川愛

視察日時:2025年10月17日
視察項目:地域公共交通政策について
視察場所:香川県高松市 都市整備局 交通政策課・創造都市推進局

【高松市の人口動態】
人口約 41 万人
高松市の人口は 2015 年(平成 27 年)まで増加していたが、その後は減少傾向にある。年齢区分別の人口では、生産年齢人口(15 歳 – 64 歳)が 1995 年(平成 7 年)をピークに減少、年少人口(0 歳 – 14 歳)も 1980 年(昭和 55 年)以降は減少傾向にある。一方で、高齢者人口(65 歳以上)は増加傾向にあり、2000 年(平成 12 年)以降は高齢者人口が年少人口を上回っている。世帯数は増加傾向にある一方、 1 世帯当たり人員は年々減少して核家族や単独世帯が増加している。

【背景】
高松市では、持続可能な地域公共交通ネットワークの構築に向けて、以下の取り組みを進めている。

  1. 高松市総合都市交通計画の改定
    令和 6 年 6 月に「高松市総合都市交通計画」を改定し、 「多核連携型コンパクト・エコシティ」の実現を目指している。この計画では、人と環境にやさしい公共交通を基軸とした、環境配慮型交通システムの構築を掲げている。
  2. 「コンパクト・プラス・ネットワーク」のまちづくり
    過度に自動車に依存しないライフスタイルの実現を目指し、公共交通と連携した二次交通(自転車等)の活用を促進している。ICT や AI などの新たな技術や、MaaS(Mobility as a Service)など国のモビリティに関する方針との連携を検討している。
  3. 市民・交通事業者との連携
    市民を始めとする関係者の理解と参加の下、将来を見据えた本市にふさわしい交通体系の構築を目指している。地域公共交通計画と補助制度の連動化を目的とした法改正に対応し、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた社会動向や交通動向の変化を反映している。

【高松市の公共交通ネットワーク再構築の考え方】
多くのバスが系統が中心部まで運行しているため、鉄道とバスが平行して運行する区間が多く、 運行距離も長いという現状から、 鉄道を公共交通幹線軸と位置づけ、 平行して運行するバス路線区間を見直し、バス路線空白地域の郊外部では拠点を整備しアクセス性を確保し、都心地域では回遊性を向上させようと考えている。

【高松市のバス路線】
1992 年(平成 4 年)には 30 路線 74 系統が運行されていたが、2016 年(平成 28 年)には26 路線 46 系統にまで減少、この 24 年間で 4 路線 28 系統が廃止された。高松琴平電気鉄道株式会社 (通称、 ことでん・かつては琴電、 コトデンの愛称で親しまれていたが、民事再生法適用申請後、イメージを一新するためにことでんと平仮名書きに改めた)との取り組み。 経営破綻後に高松市の支援も受けたなどの経緯もあり、 市がコンサル的な役割を果たし、市の助言に基いて行った事業が実績を上げるなど成果もみられていることもあり、市の公共交通ネットワーク再構築の考え方に沿った民間事業者としての理解と協力が得られやすくなっていると考えられる。

【高松市では IruCa を活用した利用促進政策を展開している。 】
(イルカは、高松琴平電気鉄道(ことでん)が運用する非接触方式 IC カードを利用したストアードフェアシステムカード)合理化ツールとして高松市のコミュニティバスや乗り合いタクシーでも利用可能としている。

① 高齢者に対する公共交通利用支援として平成 26 年から市内に在住する 70 歳以上の方を対象として IruCa が導入されている電車、 路線バス、 コミュニティバスの運賃を半額にする事業を展開している。 (ゴールド IruCa)

これまでの販売枚数 34,337 枚(as of R7.3)
70 歳以上の人口 96,375 人(as of R7.4)の約 35.6%がカードを保有している計算だが、有効カードの保有枚数は約 27,000 枚程度であると考えられている。これまでの補助金の利用実績は平成 26 年事業開始時には約 4,200 万であったが令和 6 年には約 1 億円となっている。この事業により事業者に発生する欠損金を市が全額補助するかたちで運用されている。

② 電車・バス乗継割引拡大事業として平成 26 年から IruCa による電車⇔バス乗継割引金額を 20 円から 100 円に拡大(運賃が 100 円以下の場合は無料)この事業は先に述べた高松市の公共交通ネットワーク再構築の考え方に基づき平行して運行するバス路線区間の再編成を進めるべく新駅の設置時にはバスロータリーを整備することと併せて進められている。 この事業では事業者に対するシステムの改修費などの初期費用と運賃割引の差額である 80 円を上限金額を設定して市が補助金として補填するかたちで運用されている。

【タクシー車両を活用して移動手段(バスタク) 】
高松市の「バタクス」とは、利用者の少ないバス路線で運行される、バスとタクシーを組み合わせた新しい公共交通サービス。予約制の「デマンド型」と定時定路線の「定時型」を併用し、利用者にとってバスより柔軟、タクシーより安価な移動手段とした。 2025年 1 月から実証実験を開始し現在は時間、エリア限定での「デマンド型」 のみが社会実装された。

高松市での実証実験を経て定時路線型が社会実装されなかった背景として 2 種類の運行形態を比較した実証を行った結果、 利用者数とコストの問題から定時定路線は採用されなかった。

理由として、 定時定路線は車両を小型化しても乗合事業として継続できるほどには需要に変化がなく、 既存利用者は離れてはいないが 1 便当たりの利用状況が極めて低かった(1 人以下=一人にかかるコストが大きい) 。またサービス水準を上げても需要に変化は見られなかった事があげられている。

バスタク導入時には昼間のタクシーの稼働が比較的少なかったがインバウンド増などの影響もあり最近はタクシーの稼働率も上がってきているので予約が取りづらいなどの声があった(香川タクシーのアプリ導入に支援した) 。実際はほとんどは 1 名の利用であり、 通常のタクシーの利用と変わりがないため、 バスを走らせる程の利用者は見込めないが困っている住人は一定存在する事がわかっている現状運行距離に応じたタクシー運賃から、運賃を控除した額の 2/3 を市が負担(事業者 1/3)の補助割合を今後どうするかについては検討している。最大でもタクシー運賃は 1800 円のエリアであるので市の負担は 800 円程度となっている。

【公共交通空白地域を埋めるコミュニティ交通】
高松市の郊外部や合併町で運行している路線が5路線ある。 うち 4 路線は運行事業者との覚書により事業者に対しての補助を行っているが、 山田地域乗合タクシーだけは他の補助スキームとは違い地域住民が主体的に運行計画を策定し運賃収入で足らずを補助金として市が支援しているが、収支率が 20%以下を下回る状況が 2 年間以上継続した場合には補助を終了するとしている。

【地域公共交通運行特別支援】
その他高松市では市民などの移動手段の維持、確保を図る目的で運転手の雇用促進につながる「路線バス・タクシー等事業継続支援事業」

支援金額総額 101,950 千円(実績額)
路線バス事業者 2 社
コミュニティバス等の運行事業者 2 社
タクシー事業者(個人除く)33 社
個人タクシー事業者 72 者

賃金の引上げを実施する地域交通事業者に対する 「地域交通事業者経営継続奨励金」 事業
支援金額総額 32,050 千円(予算額)
対象 4 社

などの事業も実施しているが、 タクシーの運転手は R6.1~R7.1 期間ではおおよそ 60~70 名増、 バス運転手はほぼ横ばいとなっており、 バス事業者間での運転手の取り合いなども起こっていると考えられ全体としては増えていない現状がある。 国際線の増便による利用者増、 また観光客目線での情報発信にも課題があるが地域公共交通の担い手に対しては賃上げをどう支えていくのか、 また収益構造をどう変えていくのか、 などこの産業自体の展望については引き続き課題があると捉えているとのこと。

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